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神殿で出会った少女に連れられ、私はノブレゥと呼ばれる国の城下町へやってきた。

少女いわく、ここはテーブレゥで最も栄えた国の一つだそうだ。

月稀人以外の種族が珍しいのだろうか?道で遊ぶ子供たちは不思議そうに私を見つめていた。

空間のひび割れを超えると人気のない神殿に辿り着いた。

かつては祭事場として使われていたのだろうか。今では所々崩れ落ちている。

生き物の気配はなかったが、気付かぬうちに私は“月光の番人”に背後を取られていた。


(書籍の文字が掠れて読み取れない。)


間一髪、私は“月光の番人”から逃げることができた。

偶然神殿に居た少女が脱出に手を貸してくれたのだ。

礼を言うと、彼女は「丁度出ていこうと思っていたのに」と不満げに鍵を見せる。

でももういい、とフードを被り直した彼女の、表情を捉えることはできなかった。

テーブレゥに太陽の柔らかな光が降り注ぐことは無い。

ここでは月―実際には月ではなく、淡い光を放つ恒星であるが―が空に昇るのみである。

一度「太陽がないなら、いつ昼間なんだ?」と聞いたことがあるが、首を傾げられただけだった。

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