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海を渡り、ノブレゥのはるか東方に向かった私はフランムゥに辿り着いた。

黒いテーブレゥの海における航海は非常に過酷なものであったが(さらに船賃は目を見張るほど高いのである)、無事にたどり着くことは出来た。


初めて訪れた国、大国ノブレゥは雪深くも植物が豊かであった一方、こちらは切り立った崖の中に街が築かれ、岩肌が露出していた。

資源に恵まれているとは言えないようだったが、不思議と街を行く国民は幸せそうに見える。


この国は『戦士の国』と呼ばれている。

戦神ヴィクトゥワの神殿を領地に持つため、国民は皆戦神への信仰心が厚い。


「戦神ヴィクトゥワの祝い」という意味のヴィクトゥフェテという数年に一度の祭りで、最強の戦士を決める伝統があるのだという。


ちょうど今年は祭りが開かれる年だということだ。なるほど街に活気があるのは祭りの為であろう。

街の者に是非見て行ってほしいと誘いを受けた。

水神スォースと呼ばれる神は、月稀人にとっての最高神、リュンヌの恋人であったと言われている。

水面に浮かぶ月を見て、彼らは二人の姿を想像したのだろうか?

月稀人とは思いの外ロマンチストであるようだ。

この世界の人々の多くは、海を恐れている。

淡い月の光が届かない海の中は、月稀人にとっては全く別の世界なのだ。

それでも勇敢に海へ挑む者たちは、皆一様に水神スォースを敬い、加護を受けんとしているようであった。

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