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海を渡り、ノブレゥのはるか東方に向かった私はフランムゥに辿り着いた。

黒いテーブレゥの海における航海は非常に過酷なものであったが(さらに船賃は目を見張るほど高いのである)、無事にたどり着くことは出来た。


初めて訪れた国、大国ノブレゥは雪深くも植物が豊かであった一方、こちらは切り立った崖の中に街が築かれ、岩肌が露出していた。

資源に恵まれているとは言えないようだったが、不思議と街を行く国民は幸せそうに見える。


この国は『戦士の国』と呼ばれている。

戦神ヴィクトゥワの神殿を領地に持つため、国民は皆戦神への信仰心が厚い。


「戦神ヴィクトゥワの祝い」という意味のヴィクトゥフェテという数年に一度の祭りで、最強の戦士を決める伝統があるのだという。


ちょうど今年は祭りが開かれる年だということだ。なるほど街に活気があるのは祭りの為であろう。

街の者に是非見て行ってほしいと誘いを受けた。

ノブレゥの街は寒いが、家の中は暖かい。


宿に帰ると、寒かっただろうと主人がテブㇿンという飲み物をくれた。

甘辛い香辛料の匂い。

見た目は少しドロッとしていたが、口当たりは悪くない。

風邪のひき始めにもよく効くのだという。


私はあとでレシピを尋ねることにした。

ノブレゥの特産品には、布や衣類、防具といった装備類が挙げられる。

それらには大角の職人によって何重にも月の力が込められており、例え軽量でも耐久性は折り紙付きだ。

独特な淡い光を反射させるため、知識のあるものならテーブレゥの外であっても一目で解るだろう。

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